サードインパクトは起こってしまった。

 一人の人間が己の自己満足、欲望のために起こしてしまった........といえばそこまでになる。

 まあ、だけど、多分、そんな簡単に割り切れるような事ではないと思う。

 本当はもっともっと、いろいろな人間たちの思惑が重なり合って起きたと思う。

 実際、真実を知っているであろうはずの人々は残らずこの世から居なくなってしまったのだから

 一体、何が原因なのだと問われても誰も知りえるわけがない。

 と....いうよりも、それ以前に世界、地球上から人間たちが居なくなってしまった。

 でも、地球上から「全ての」人間が居なくなったかと言われればそうではない。

 神様は地球を無人の惑星にするつもりはないらしい。

 何故だか知らないけど、生き残ってしまった人間がいるのである。

 それは一体誰か?

 そう、ただいまこんなことを回顧しているこの僕、碇シンジ。

 そして、もう一人居る。

 だって、人間というのは対でなければ生きていくことは出来ない。

 昔、歌であった「人は一人では生きられない」、あれはまさしくホントの事。

 孤独を望む人間というのはいざ実際にその立場に置かれたとしたら、今度は人の温もりを求めるものだと思う。

 まあ、僕は哲学者じゃないし、そういう難しい事は良く分からないけど。

 と、まあ「生き残った」もう一人の人間は惣流・アスカ・ラングレー。

 どうして彼女なのだろうか?

 ふと、そんな疑問が湧き上がる。

 だって、僕の事を目の敵にしていたのに。

 事ある毎に僕にたいして当り散らしていたのに。

 いつも、人のことをいいように使っていたのに。

 2人だけで居たら気まずいことこの上ないはずなのに。

 でも、僕がここに存在するのは僕がそう望んだから。

 そして、アスカがそこに居ることも..........。

 なにはともあれ2015年、地球の人口は2人になった.........。



Whole New World 〜世界に初めてのキミとボク〜


 
 「気持ち悪い..........」
 

 
 それが彼女の第一声だった。
 
 僕はあの時、何故か知らないけど彼女の首を絞めていた。
 
 自分の行動を理論だてて説明しろと言われたらあの時の行動に関しては絶対に不可能だと思う。
 
 自分自身の行動の動機も分からない程、あの時は自分は気が動転していた。
 
 あまりに沢山の出来事が一度に起こりすぎたせいで自分の思考のキャパシティーをオーバーしていた。
 
 普通の人間だとしたらそんなものじゃ済まないんじゃないかな?
 
 僕みたいな稀有な体験を繰り返してきた人間だってそうだったんだから、
 
 一般人だったらとっくに発狂しているところだろう。
 
 まあ、その後の事は大したことじゃない。
 
 アスカの首から手を離し、彼女の横に転がった。
 
 赤い湖に黒い空、遠くに見える巨人の亡骸と、そして.....綾波。
 
 地獄があるとしたらこんなところなのだろうか?
 
 少なくとも人間が想像上に描いた天国という場所はこんな場所ではないはずだ。
 
 いや、その考えもどうなんだろう?
 
 天国や地獄なんて誰も見たことはない。
 
 いままで、天国に行って帰ってきた人間なんて居ないわけだから。
 
 だから、天国というのが楽園のようなものはもしかしたら単なるステレオタイプにすぎないとも考えられる。
 
 ホントの天国っていのうのは案外こういう場所なのかもしれない。
 
 こういう事を頭の中で考えているということは昔の僕にとっては信じられないことだ。
 
 僕は妙に冷静にこの非日常的な現実を捉えていた。
 
 ここまであっさり現実を受け入れることが出来るとは夢にも思っていなかった。
 
 ふと、横を見やる。
 
 包帯姿が痛々しいアスカは先ほどから目をつむったまま。
 
 一瞬、死んでしまったのかと思われるくらいにピクリとも動かないが、
 
 彼女が゜生きていることは胸が上下していることを見れば一目瞭然だった。
 
 どうやら、眠ってしまったらしい。
 
 思い返せば、彼女との付き合いも結構な長さになっていた。
 
 空母の上で出会い、作戦のために同居。
 
 なぜか、作戦終了後もそのまま同居する事になり。
 
 浅間山での出来事、偽りのキス、シンクロ率での確執、そして彼女の崩壊。
 
 アスカの人生って、いったいなんだったんだろうと思う。
 
 彼女はまさにエヴァのために生まれてきたような人間だった。
 
 幼いころから、期待を一身に背負い、常に完璧を目指して訓練の日々を送ってきたという事を聞いたことがある。
 
 とうてい、普通の子供ではなかっただろう。
 
 そんなことを言ったら僕だって普通じゃない。
 
 まず、なんといっても親が普通じゃない。
 
 両親は、ネルフ指令にエヴァの発案者。
 
 普通のサラリーマンに専業主婦とかではないのだ。
 
 僕はそういう意味で幼いころから至極、特殊な環境におかれていた。
 
 世の中に実の父親と十年も顔を合わせていない子供というのはそういないと思う。
 
 ただ、不幸だったかと聞かれたらそれは分からない。
 
 幸せの目盛りというのは人それぞれだし、自分はまず何が幸せかという事を教えられなかった。
 
 だから、他人が自分の境遇に同情して泣いたりしたこともあったけどどうしてその人が泣いているのかも分からなかった。
 
 そんな鬱屈な日々を送っていた僕に突然として父親からの呼び出しがあった。
 
 まあ、それから様々な出来事を経て現在に至っているのである。
 
 いずれにしろ、どうやら見渡す限りでは現在活動している人間というのは僕とアスカだけのようだ。
 
 ふと、僕は空を見上げた。
 
 相変わらず、漆黒の闇が天を覆っている。こんな様子では現在が昼なのか夜なのかその区別も付きようが無い。
 
 「あれ」から結構な時間がたっているから、普段どおりならもう夕方くらいだろうか?
 
 一すこし前ならそろそろ夕食の準備にとりかかっている時刻だと思う。
 
 ふと、そこまで考えていてなんだか無性におかしくなってきてしまった。
 
 「もう、そんなこともできくなっちゃったけどね........」
 
 誰に言うでもなく僕はそうつぶやいた。
 
 そして軽くため息をつくと立ち上がった。
 
 もう、過去の事に関していろいろと感慨にひたっているも終わりにしよう。
 
 これまでのことはいろいろと考えてきて、思うことも無いと思う。
 
 あとは「これからのこと」を考えなければいけないってこと。
 
 ふと、傍らで寝息を立てている少女を見やって僕は静かに決心をした。
 
 さて、そうしたら思い立ったが吉日というのかそこからの僕の行動は早かった。
 
 眠ったままのアスカを背中におぶるとひとまずは町があるはずの方向を目指して歩き出した。
 
 これからいろいろとするにしろ日常品の入手は必要不可欠だと思うし、当面の生活の拠点は確保しておきたい。
 
 途中で、多数の服が散乱しているのを目撃した。
 
 恐らくは、少し前までは持ち主がいたであろう服。
 
 それはまさしく、死体の山のように思われた。いや、またはセミの抜け殻といったところだろうか。
 
 いずれにしそれらの服装がここら辺には人間はいないという事を如実に証明していた。

 「ン.........」

 背中から声が聞こえた。どうやらアスカが起きたらしい。

 「アスカ、起きた??」

 僕は穏やかな口調で背中の彼女に話しかける。

 「!!」

 すると彼女は気が付いたらしく僕の背中で暴れだす。

 「ア、アンタね〜、何やっているのよ? ちょっと、おろしなさいよ!!」

 どうやら、十二分に元気らしい。

 このまま背中で暴れられていると進むに進めないのでアスカをそっと降ろす。

 ふと、疑問が浮かんだ。

 いま、アスカは両腕をばたつかせて暴れた。

 だけど、彼女は量産機と戦いで腕を裂かれたはず。

 「アスカ、腕は大丈夫なの??」
 
 「なによ、誤魔化すつもり? あれ? でも、アタシの腕は確か........」

 アスカもどうやらその事実に気が付いたらしく、訝しげな表情を浮かべる。

 「アスカ、包帯とってみてよ、目の方も。」

 「うるさいわね、いわれなくても分かっているわよ!!」

 そういってアスカは目と腕の包帯を取り去る。
 
 驚いたことに、アスカの腕には傷一つ無く、紺碧の瞳もその光を失ってはいなかった。

 昔のアスカのままだった。

 しかし、どういうことなのだろう?

 アスカの傷が元通りになったこともサードインパクトの力なのだろうか??

 「ちょっと、どうよ? アタシの顔? 傷とか付いていないでしょうね?」

 険しい顔をして僕の事をにらみつけるアスカ。

 気のせいだろうか、入院時とくらべてずいぶん顔色がいいような気がする。

 それにいつもと変わらない強気な態度。
 
 「アハハハハハハハハハハ」

 僕はなんだか妙にうれしくなってつい笑い出してしまった。


 「ちょっと、なに人の顔見て笑っているのよ?」
 
 「いやいや、そうじゃないよ。アスカは昔どおりに綺麗だよ」

 「なっ....」

 ふと、僕が言った言葉にアスカは茹蛸のように顔を赤くしていた。

 「そうだ、アスカ。町まで競争しようよ!! 後に着いた方は今日の夕食作るって事で」

 そういって、脱兎のごとく駆け出す僕。

 「待ちなさいよ!! アンタには色々と聞きたいことがあるんだから〜!!」

 慌てて追いかけてくるアスカ。
 
 赤い湖の辺を二つの影が駆けていった。

 

 2015年、世界で最初の2人の物語はこうして幕を開けた。


 to be continued




 どうも、G−MAXです。今回は比較的に前回から短いインターバルで小説を更新できました。
 今回は僕自身としては初のアフターEOEものです。
 けっこう、みんなが生きているアフターEOEというのはわりとあると思いますが、
 もし、世界に2人だけが残った場合はどうだったんだろう?という感じで
 EOEのその後の2人を描くことに挑戦してみました。
 しかし、あれですね。アスカもシンジも立ち直り早!!
 シンジくんの性格も結構ドライな感じですしね。どちらかというとコミック版に近い性格かも。
 まあ、この後どうなるのか?という事も含めましてがんばりたいと思います。
 というわけでまた、次回に会いましょう、では!!


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