うすぐらい部屋の中に彼女はいた

 目には生気が感じられなく

 美しいと思われるその顔立ちに疲労の色がありありと表れていた

 視界が慣れてくるとその部屋の惨状に気が付く

 衣類などは乱雑に床に投げ捨てられ

 食器類は殆どが割られいて無数のかけらが散らばっており

 何年も掃除されていないのだろうか、ベッドは誇りまみれだった 

 そんな部屋と彼女が手にしているのは真新しい一通のエアメール

 それと、一枚の写真

 一組の男女が中睦まじそうに微笑んでいる。
 
 紙面には簡潔に


 「この度、僕たちは結婚することになりました。」


 送り主の名前は「Sinji Ikari」 

 宛名の名前は「Souryu Asuka Rangray」

 「そう・・・・・なんだ。」

 彼女はつぶやくと薄笑いを浮かべた

 「幸せ・・・・・・・・・なんだ。アイツ・・・・・・・・・・」

 誰に言うでもなく、独り言のように言葉を吐き出す

 「ウフフ・・・・・・・・・そう・・・・・・・・・・・・・幸せ。アイツは・・・・・・・・今、幸せ・・・・・・・・・・

 フフフフフフ、ハハハハハハハハハ!!!!!」

 高笑いを浮かべてフラフラと彷徨う、その目には狂気の表情が読み取れた

 「許さないわよ、シンジ!!! あなたの全てはアタシのものなんだから!!!

 奪ってやる、壊してやる、崩し去ってやる、消し去ってやる、取り去ってやるわ、そんな幻想!!!」

 顔には邪悪な、見るものに恐怖与えるような笑みをたたえていた

 それと同時に頬を伝う一筋の涙
 
 だが、その時、彼女は頬に流れる涙の意味を知る由もなかった

 


    愛が呼ぶほうへ・・・・・・・・・・・・・・・


 「ねえ、シンジ。新宅のカーテンの柄はこれにしましょうよ。」

 花柄のカーテンのサンプルを手にとってその女性はシンジと呼ばれた青年に話しかける。

 「ん、まあそういうのは僕にはセンスとかないからね。マナにまかせるよ。」

 シンジはマナと呼ばれた女性に相槌を打ちように返事する。

 「もう、せっかくの新婚家庭なんだよ。やっぱりこういうのって2人でちゃんといいものを探したいじゃない。
 なのにシンジったらさっきから私に相槌打ってばかりで、自分の意見とかないの?」

 シンジの気の抜けた返事にマナを頬を膨らませる。

 シンジはそういうマナを見てかわいいな、とほくそえんだ。

 あの戦いから早いもので五年が過ぎていた。

 当初、精神的にかなりの衰弱をしていたシンジもマナと再会し、彼女の献身的な看護で立ち直ることができた。
 
 そして、そのマナとは来月に結婚を予定している。

 プロポーズをしたのはシンジの方から。

 昔の彼では考えられないような思い切ったことをすると思うが、それもマナと出会って

 精神的に成長した賜物なのだ。

 しかし、指輪をもって現れた彼にマナは最初、冗談だと思い笑っていたのだが、

 シンジの真摯な眼差しと雰囲気で彼が本気だと悟り、途端に今度は泣き出してしまったのだ。

 もちろん、マナの返事は言うまでもなく「イエス」だった。

 と、まあそんなわけで今日は2人の新婚生活のための必需品を調達するためにインテリアショップに来ている。

 とはいってもシンジはインテリアのことなどさっぱり分からないのでマナの後を付いてまわるだけなのだが・・・・・・

 そんな感じで一見、順風満帆のようなシンジなのであるが、彼には未だに頭の隅から離れない一つの事があった。

 それは、二号機パイロット=惣流・アスカ・ラングレーのことである。

 あの戦いの後でシンジ同様、いや、シンジよりさらに重く精神を病んだアスカはドイツに送還された。

 シンジもそのとき病室でベッドに臥せっていたため、アスカには何も言えずに分かれてしまった。

 それから、五年間、彼女から連絡は来ない。

 シンジの方から定期的にドイツ支部を通じてメールを出しているのだが、一回として返事が返ってきたためしはなかった。

 「五年間連絡が来ない」と言ったが正確には「五年間連絡が来なかった」だ。

 というのも、先日、なんとアスカから返事のメールが来たのだった。

 手紙の内容は

 「お2人の結婚式、よろこんで出席させていただきます。」

 無味乾燥で飾り気のないこの一行のみ。

 先月の末にアスカに結婚式の招待状を送った返事であった。

 これはシンジには意外なことであった。

 五年間、彼女からはなんの音沙汰もなかったから今回もどうせ返事はないだろうと考えていたし

 実際、いまさら互いに会うというのもバツが悪いような気がした、シンジとマナの結婚式とくればなおさらだ。

 アスカは何かにつけてマナを敵視していわけだし、そんな人間と結婚するシンジに会いに来るものだろうか?

 そんなわけで、シンジはアスカの返事に対して多少なりとも動揺していた。

 「アスカが来るのか・・・・・・・・また、日本に・・・・・・・・」

 シンジは幸せそうなマナを見つめながら独り言をつぶやいた。

 なんでいまさらという気持ちはある。

 いや、元々はシンジから誘ったわけだから、自業自得なのであるが。

 だけど、彼はマナと将来を誓い合った仲だ。

 こういうと自惚れなのかもしれないが、シンジはアスカにとって戦友以上の関係だと彼自身は思っていた。

 そしてシンジも彼女についてはすくなからずも意識している部分はあった。

 いや、訂正する。

 シンジにとって彼女は大切な、存在だった。

 彼は五年間の間、その煮えきれない想いを抱えてすごしてきた。

 マナと出会い、結婚をするに至って、ようやくその気持ちが断ち切れそうだった、その矢先だ。

 それに彼女に対しては罪の意識も混在する。

 最後にアスカを見たときのヴィジョンはまだハッキリと覚えている。

 うつろな、死んだ魚のような目をしたアスカに馬乗りになるシンジ。 

 そして彼女の細くて白い首筋にシンジの手が・・・・・・・・・・・・・

 そんな悪夢を幾度となくシンジは見てきた。


 


 「・・・ンジ・・・・・・・・・シンジ・・・・・?」

 怪訝そうな顔をしたマナが覗き込んでくる。

 どうやら、考え事をして回りが見えなくなってたらしい。

 「どうしたのシンジ?苦虫噛み潰したような顔して立ってて、子供が見たら泣いて逃げるわよ?」

 「あ、ああ、なんでないよ、ちょっと・・・考え事をね・・・・・・・・」

 インテリアショップでそんな他愛もない話が繰り返されている頃・・・





 第三新東京国際空港

 ルフトハンザ航空、18:30着の425便の入国ゲートから出てくる女性。

 シックなコートでサングラスをかけている。

 が、その赤みがかかった鮮やかな金髪と端正な顔立ちは、決して衆人に埋もれる事なかった。


 「五年ぶり・・・・・か・・・・・・・・・・」

 彼女=惣流・アスカ・ラングレーは一言つぶやいた。

 to be continued


 いやいや、久しぶりの作品ですよ、奥さん。もう、一年ぶりくらい??いや、半年振りくらいか。
 さて、今回の作品ですが、ドロドロしてます。
 どれくらいドロドロするかっつうと、ホワイトアルバム+君望ぐらいな感じで。
 うーん、まあ、いまいち分かりづらいですね。とにかくドロドロするんですよ。
 とりあえず、マナは不幸になります。
 私が書く。作品でマナが幸せな結末を迎えるという事はありえません(マナファンの方勘弁を)。
 あと、題名の「愛のよぶほうへ」っていのうはポルノグラフィティの曲からとりました。
 ヒットしているから聞いたことがある方も多いと思いましたが。
 なんなく作品のイメージに合っていたので。
 テーマはずばり「愛」です(うわ、恥ずかしい)
 愛って綺麗なモンじゃないんだよって言うのを書ければいいなと思っています。
 まあ、次の更新がいつになるか分かりませんが、気長に待っていてください。


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