時というものは無情なものだと思う。

 

 その人にとって、とても大切なものは時という物がまるで水に流すように簡単に失わせてしまう。

 

 今までの思い出、大切な人、大切な場所、それら全てを時は押し流していく。

 

 だが、時はその人にとつて忘れたいもの、忌まわしい過去は押し流してはくれない。

 

 時というものはとてつもなく無情なものだ。

 

 僕はアスカが呟いた言葉を聞いて改めてその事を実感せざるを得なかった。

 

 もう、時は2人の間を癒してはくれないのだろう。

 

 十年という時を費やしてもそれを成せなかったのだから。

 

 恐らく、この先も.................

 


Hallelujah in the snow


 

 そう......彼女はいまだに僕を許してくれてはいなかった。

 「でも..........アタシはアンタがした事を忘れてはいないわよ。」

 僕の心の中で彼女の言葉が幾度となくリフレインされる。

 その後、僕たちは研究所に到着するまでひたすら無言であった。

 時折、アスカの方を横目で見てみると彼女は窓に視線をむけたまま........

 僕は何か言わなきゃと考えてはいたのだが、言葉が喉のところで詰まってしまいなにも言い出せなかった。

 こういう時でも”昔”だったらそんなに気まずくはならなかった。

 いつも僕たちの真中にはミサトさんがいて彼女が僕たちの間を取り持っていたから。

 でも、もうミサトさんはいない................

 10年前のあの戦いで彼女は死亡してしまった........

 彼女の遺体の行方は分からない。

 あのあとLCL化してしまい結局は固体として復帰はしてこなかったから。

 だから、彼女が死亡したと裏付けるものはない

 せいぜいあるとしたらネルフの殉職者リストに名前が記載されている事ぐらいである

 僕はミサトさんの存在の大きさを切々と痛感した

 

 研究所に到着すると僕は早速アスカに施設の案内をした。

 でも、僕はハッキリいって一刻も早くこの場から逃げたい衝動にかられてしょうがなかった。

 アスカのあの告白を聞いた後ではもう彼女の側にいることが辛いし

 恐らく、アスカにとっても僕が視界にいるだけで精神的に苦痛だと思うから。

 十年前、僕は彼女のプライドを粉々に打ち砕き、彼女が築きあげてきた物を全て奪ってしまった。

 そのせいでアスカはエヴァには乗れなくなってしまい........狂ってしまった.........

 さらには病室で寝ていたアスカに対して行った事..........

 そして.......場面はあの赤い海のほとり................

 (やめてくれ!!こんな場面はもうみせないでくれ!!あの日のあの瞬間なんか.........)

 僕の頭の中では十年前のあの日の出来事がまるで昨日のように思い出される

 

 

 「ジ........シンジ........!!」

 「あっ何、何!?」

 アスカの声で我に気づく、どうやらいつもの白昼夢に陥っていたらしい

 「アンタ、そういう部分は変わっていないのね。そういう何か考え事に陥ってしまう所」

 そういうアスカはクスッと微笑した。

 今日、アスカに出会ってから彼女が初めてみせた笑顔であった。

 「誰だって、変わってしまう部分もあれば、いつまでも変わらない部分もあるよ。アスカだってそうでしょ。」

 僕はこの言葉を何気なくアスカに振ったが、いま考えると偉とても軽率な返事だったと後悔している。

 「そうね........アタシの変わらない部分.........アンタに対する感情とかかしら.....」

 再び、僕を言葉のナイフが切り裂こうとする。

 その言葉の端々に未だにくすぶり続けている暗い憤怒の感情が伺える。

 (そう.......アスカを変えてしまったのは僕だ..........)

 そして繰り返される自責の念

 アスカと会ってから僕はその思考の堂堂巡りを強いられていた。

 その後、僕が彼女とどんな会話を交わしたかははっきり言って覚えていない。

 多分当り障りのない話題で終始したのだろう。

 

 「で、今夜はどこに泊まるの?」

 施設の案内が一通り終わってロビーの自動販売機で買ったコーヒーをアスカに渡しながら僕は尋ねた

 「いろいろと、バタバタして向こうを出てきたからね。ホテルの予約とかは取るの忘れていたわ.......」

 「え..........じゃあ......」

 「アンタのところのマンションがあるじゃない。元々はアタシも住んでいたんだから問題ないでしょう?」

 アスカーは上目遣いでこちらを見つめてくる。

 僕はそれに抗える訳もなく彼女とともに自分の住むマンションに向かった。

 

 

 「ここも変わっていないわね.........」

 僕の部屋に着くなり開口一番、アスカがそう呟いた、僕に言うように、または独り言であったのかもしれない

 「いまでもさ、リビングに行くとミサトさんが出てくるような気がするんだ........」

 「そう............」

 アスカは何だか寂しそうにうつむく、ミサトさんの事は言うべきではなかっただろうか........

 「あの頃は今考えるとそれなりにいい生活だったわ。アンタがいてミサトがいて...........

 使徒とかとは確かに戦っていて辛かったかもしれなかったけど、帰る場所があったしね..........」

 僕はアスカが言っている事を黙って聞くしかできなかった

 「もう一度やり直せないかな?」とかそういう言葉を掛けてあげる資格は僕にはなかったから.....

 

 食事をとりながら僕たちは今までの十年間の事を話し合った

 僕がどうやってその後生活していたかとか

 そしてアスカがドイツに帰った後、何をやっていたかとか......

 僕たちはこの十年の空白を埋めるようにありとあらゆる事を話し合った

 そして、唐突にアスカが切り出した

 「キス.........しようか............」

 「え?」

 「キス.........よ」

 キスと聞いて僕の中に蘇るのは.........あの日の出来事.........

 

 

 「あ〜あ、やっぱ暇つぶしにキスなんてするもんじゃないわね」

 

 アスカはそう言い放ち洗面所でおもむろにうがいをしだした.......

 皮肉にも僕はその出来事があってから一段と彼女に惹かれていった

 

 「!!!」

 気がつくと、僕の至近距離にアスカの顔が.........

 そして、僕の唇はアスカの唇によって塞がれていた

 僕たちは通算二度目のキスをした

 

 

 

 

 

 どうしてこうなってしまったんだろう..........

 僕はベットで横になりながらタバコに火をつける

 傍らにはアスカがうつぶせになって寝ている

 アスカ.......君はどういうつもりで僕とこういう事をしたんだい...........?

 彼女の表情は僕の側からではわからない

 「ねえ..........どうしてアンタとこんな事をしたと思う?」

 アスカが顔を向けずに僕に尋ねてくる、どうやら起きていたらしい

 「.....................」

 ハッキリ言って、表情同様、彼女の真意は僕の預かり知らない部分であった

 「よく........分からないよ。今は気が動転してるからあんまり考えられないね.........」

 「知りたい........理由?」

 アスカは悪戯っぽい笑みを浮かべて僕に迫ってくる。

 なんか、僕は今まで見てきたアスカとは違う人を見たような気がした。

 彼女の浮かべる笑みは恐ろしく妖艶で、無邪気で、そして......美しかった。

 アスカ確実に少女から大人の女性になっていってると実感した。

 「いいよ.........」

 僕はアスカが言う理由を知りたくはなかった。

 なんだか、とてつもなく嫌な予感に襲われたから..........

 

 to be continued


 どうも、久しぶりです。G−MAXです。

 久しぶりのSS更新ですよ〜。

 しかもこの作品、どう考えてもクリスマス用の作品なのに、この時期にアップっていかがした物でしょう?

 さらに前後編の予定だったのに、容量の関係上三つに区切る事となったり。

 私の失態ぶりが伺われる作品になってしまいましたね。

 いや〜、真に申し訳ないことです。

 とりあえず、クライマックスも成るべく早くアップできるように急ピッチで制作をしておりますのでご期待ください。

 間違えても第三話は今年のクリスマスにとかそういう展開はないと思いますのでご安心を。

 なんとか今月中にこの作品に関してはケリを付けたいと考えています。

 後、連載作品に関しては長い目で見ていただけると幸いです。

 まず、この後に「Missing〜」の第三話をなるべく短いインターバルでアップしたいと思います。

 そっちの方は大体半分くらいまでは仕上がっているので今週中にも載せる事ができると思われます。

 それと最近音沙汰のない「超機動〜」の方も頑張ってかきますのでそちらの方もご期待ください。

 なんだかいろいろと事務通告になってしまいましたが、今後もサイトに遊びに来て下さいね!!


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