Dragon Eyes


  第一話:「吸血鬼」その3

 

 池袋東口、PM 11:00

 大都市の一角、ビル街の足元に闇はあった

 そして、その中にそいつはいた 

 カハァ..............
 
 そいつは、飢えていた

 カハァ................

 また、いつものように食事を摂らねばならない

 忠実な木偶を作るためとはいえ、この間の食事は酷く不味かった

 今夜は、もう少し新鮮な奴が欲しい

 まあ、この街は魔都だ

 ここに魅せられて訪れる人間などは星の数ほどいる

 それこそ、お目当ての獲物を探すのも大した労は要さない

 コートのポケットに手をやり、何かを探している

 やがて出てきたのは、随分経っているのだろうか、黄ばんだ写真が出てきた

 その写真には黒髪の清楚そうな少女が写っている

 「真夜、、、、、、、、、、、、、、」

 一言つぶやく

 ふと、前方から人の気配を感じ取り、コートに写真をしまう

 感じからして女、しかも若い..............

 久々のご馳走だ

 そいつはペロリと舌なめずりをすると闇に溶け込んだ

 今夜もまた、食事の時間が始まる..........





 「ついていないな......................」

 誰に言うでもなく坂元千恵は呟いた

 今日のシフトは佐伯和夫と2人っきりだった

 正直、千恵は佐伯に関してはあまり好印象を抱いていなかった

 いつも、目上の人間には媚を売っているのに自分たち後輩に対する高圧的な態度

 そして、何を考えているのか分からないようなニヤニヤした表情

 さらには、ネットリとした話口調

 職員間でも彼の評判はことさら悪く、「一緒にシフトに入りたくない職員No.1」と称されていた

 そんな評判に漏れず、今日の勤務はことさら、不快なものであった

 仕事柄、肉体的に辛いというのはある程度慣れているのであるが。

 今日みたいな状態はむしろ精神的な疲労が襲ってくる。

 「やめちゃおうか..........」
 
 どうせ、結婚までの腰掛程度のつもりで考えていたし、

 今の職場にそれほどの思い入れがある訳ではない。

 女子大を出て新卒採用された葉いいが、最初に配属された職場が悪かった。

 池袋と聞いていい感じはなかった。

 彼女の家は目黒で、そこと比べるとなにか池袋という街は清潔感がなく雑多な感じ。

 まあ、こんなものはステレオタイプなのだろうが所謂「お嬢様」の彼女にはそれを

 真に受けている節がある。

 ちょっとした社会勉強のつもりで勤めてるわけだし、仕事を辞めても経済的には特に困らない。

 

 ま、どうせ明日も出勤するんだろうけどさ..................

 

 そんなことを考えながら歩いていたからだろうか?
 
 気が付いけば彼女は袋小路に入っていた。

 「あ、やば道間違えた。戻らなきゃ.......」

 そう言って、クルリと回転してもと来た道を戻ろうとしたときだ。

 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ふと、自分の名前を呼ばれたような感じがして、振り返る。

 もちろんそこにあるのは薄気味悪い暗がりだけ

 第一、人がいたらさっき迷い込んだ時点で気が付くというものだろう。

 「疲れてるのかな? アタシ..................」

 きっと、そうだ。ここ最近、激務が続いているし、ボーっとしてたんだろう。

 自分に言い聞かせるように頭のなかでつぶやいた。

 


 「千・・・・・・・・・・・・・・恵・・・・・・・・・か・・・・・・・・・・」



 今度ははっきり聞こえた。

 自分の名前を呼ばれてる。

 否定してもしようがないほどハッキリと。

 間違いない。

 誰かに呼ばれてる。

 気づいた瞬間に彼女は走り出していた。

 何故そうしたのか?

 理論的に説明するのはまず不可能である

 感覚が.............彼女に告げるのだ

 逃げろと................

 彼女は走った

 道などはもう知ったことではない

 ただ、少しでも、あの声から遠くに行きたかった

 






 どれくらい走っただろうか

 もう声はしてこない

 なんとか逃げ切れたのだろうか

 フッと安堵を感じると共にドッと疲労が襲ってくる

 全身の力が抜けてその場でしりもちをついて座り込む

 今日は人生において最悪の厄日かもしれない、早く家に帰って寝よう

 呼吸が落ち着いて、彼女は再び立ち上がる

 「あれ、ここどこだろう.............」

 千恵が経っていたのはみすぼらしい裏道

 道沿いに沿って壁が連なっている、壁から見え隠れする供養塔の先端

 雑司ヶ谷霊園、小泉八雲、永井荷風、夏目漱石と言った著名人が眠ることで

 知られている都内でも屈指の巨大霊園である

 園内は昼間は著名人の墓を訪ねる人などが見受けられたりするものの

 ケヤキが多い茂って薄暗い

 そして、夜になるとひこは真の姿を現す

 昼間は強い日差しをさえぎる役目のケヤキも巨大な物の怪のような様相を呈し

 遠くに望むサンシャインの光とのミスマッチがより一層の不気味さを演出する

 もちろんこの霊園での怪奇譚は枚挙にいとわない

 まさしく、大都会にポッカリと開いた闇なのである

 「やだ、駅と正反対の方向に来ちゃってるし、この時間帯だと荒川線もやってないし
  とにかく戻らなきゃ」

 普通の人間なら夜中にこんな場所に何時までもいたくはないだろう

 彼女は池袋駅の方向に向って歩みを進めだした



 「あれー坂元さんじゃないですか?」

 また、自分の事を呼ばれた。

 しかし、今回は恐怖を感じなかった

 聞き覚えのある声、いつもは不快な印象しか受けないが

 この声が今日ほど安心できる日はないだろう

 振り向くと、そこに立っていたのは佐伯和夫だった

 「佐伯さん、こんな時間にここでなにやっているんですか?」

 「いやー、ちょっと仕事帰りに飲んでましてね。気が付いたらこんな時間になってしまったんですよ。

 だけど、坂元さんのほうこそこんな所でなにやっているんですか?」

 千恵は笑われるかもしれないと一瞬躊躇したが思い切って佐伯にいきさつを打ち明けた

 佐伯は彼女の話を黙って聞いていた
 
 そして、佐伯は嘲笑するでもなく呆れるでもなく、ただ一言

 「それは、大変でしたね................」

 千恵は佐伯のこの落ち着きぶりに違和感を感じた

 普通の人間なら少なくともこんな馬鹿げた話を聞いて落ち着いているわけがなかった

 普段から気が小さいはずの佐伯ならなおさらのことだ

 職員同士で怪談話などを始めるといつも一番最初に席をたっているのに
 
 なんで、どうして?こんなに落ち着いているの?

 彼女には佐伯の冷静さが不安でたまらなかった

 「でもね...................」

 再び、佐伯が口を開く

 「それは素晴らしいことなんですよ。とても、とてもね.............」

 そう言ってニヤッと、いつもの、いや、何時も以上の嫌らしい笑みを浮かべた

 笑った瞬間、妙に発達している犬歯がハッキリと見えた

 何かがおかしい、千恵は無意識のうちに後ずさる

 「あなたも体験してみればいいんですよ。ストレスなんかスっー、と吹き飛びますよ。

 すんごく気持ちいいんですから。」

 佐伯が一歩前進する

 それに合わせて千恵は一歩後退する

 「い、嫌、そ、それ以上来ないでぇぇぇぇ!!!!」

 混乱して涙声の悲鳴を上げる。しかし、それは佐伯にとっては逆効果だった

 「なに、!?お前も拒絶するのか??あそこの連中みたいに。俺はなぁ、あの方のおかげで
 
 生まれ変わったんだよ。おれは選ばれた人間なんだよ。なのに、なのにぃぃぃ!!!

 お前は俺を拒絶するんか??? あああぁぁぁ??この買女がぁ!!!」

 佐伯が侮蔑の言葉を投げかけ物凄い形相で迫ってくる。



 コロサレル!!!!!


 千恵は恐怖で目を瞑った




 「弱いものいじめはそこら辺にしとけや、この低級ビーストが!!!」

 背後から良く通る声がした

 思わず、佐伯と千恵は声の方向を振り向く

 17,8歳だろうか、街灯の明りの元に金髪の少年が立っていた

 「なんだ、貴様は?死にたがりの馬鹿か!!??」

 佐伯が野獣のように吼える。その声や造詣にはもはや元の面影はなかった

 その言葉に少年の口元がななめに歪む

 「こういうドアホには言葉でいってもわからないかもな。かかって来いよ、木偶人形!!」

 佐伯を逆上させるにはそれだけで十分だった

 人間のそれとは思えない巨体が少年に躍り掛かる

 「遅い!!」

 刹那、佐伯の視界から少年消える

 完全に捉えたと高をくくっていた佐伯はうろたえる

 次の瞬間、横顔に強烈な衝撃が走る

 少年の横蹴りが見事に顔面にヒットしたのだ

 「グガッ!!」

 佐伯の表情が苦痛で歪む。しかし、その瞳から闘争の炎消えていなかった

 でたらめに腕をふりまわす

 だが、それは空しく空を切るばかりだった

 「時間をとるのは流儀じゃない。終わりにするぞ!!」

 瞬時に佐伯の背後に回りこんだ少年がなにやら呪文のような言葉を念じると

 彼の腕に蒼白い炎のようなものがともった

 「聖騎士式蒼霊光術第02法 ファング!!!」

 佐伯には叫ぶ暇も与えられなかった。彼の身体を蒼光が一閃のもとに貫いたのだ

 やがて、その佐伯だった「モノ」は音もなく崩れ去った

 そして塵になり風と共に空に舞い上がりきれいに消えてなくなった

 彼にとっては、予想だにしなかった人生の幕引きだったが

 ここで終わったことは幸せだったのかもしれない

 社会に適合で着なかった人間にとっては・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「急ぎとはいえ、一般人に見られてしまったか。さて・・・・・・・・・」

 少年が視線を向けるとそこには気を失って倒れている千恵の姿があった

 「こいつも本体ではなかったか。急がねばなるまいな・・・・・・・・・」

 そう、つぶいて彼がみあげた空には巨大な墓石のようなサンシャインの姿と

 血のように赤く燃える月があった



 to be continued



 ども、G−MAXです。ドラゴン第三話いかがでしたでしょうか?

 え? LASのほうはどうしかですって?

 あー、まあ、そっちは長期的なスパンでね(汗)

 まあ、新キャラらしい人も出てきてここらへんが展開が動き出します

 今回で大体のこの話の関連キャラクターは出てきたかな?

 おおまかに分けてここまで三つの動きがありました。

 一つは、宗一郎たち、もう一つは警察、最後の一つは今回の新キャラ(千恵さん)

 この三つの動きが結末に向って収束していく感じですね

 はたして、どんな感じでこれから出会っていくのか

 えー、まだ考えていないです(オイ!!)

 話は変わりますが、この間、海賊島の蘭麻さんたちと富士急ハイランドに行って来ました

 ジェットコースター楽しかったです。こんどはUSJかTDNか、楽しみにしておりますです

 はいはい、そんな感じで次はLAS作品の方を更新するつもりです。

 また、読んでくださいね。

 「久しぶりに日焼けした」G−MAXでした


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