Dragon Eyes


  第一話:「吸血鬼」その1

 

 池袋―――JR埼京線、山手線、東武東上線、西武池袋線といった在来線が一同に集まる交通の要所。

 そして「副都心」新宿から程近い東京でも屈指の賑わいを見せる街である。

 この街は多種多様な側面を持ち、またそこにいる人間もありとあらゆる類に分かれる。

 年齢、性別、職種、国籍、そのどれを取っても多岐に分かれおり、まさしく人間の坩堝なのだ。

 さて、その賑わいを見せる池袋の中でも一際大きな賑わいを見せているのが西口にある「平和通り横丁」

 左右に隙間無くパチンコ店やゲームセンター、カラオケ、飲食店などが建ち並んでおり、路上には

 通勤帰りのサラリーマンやコンパの二次会に来た学生、それにパブの呼び込み等で常にごった返している。

 そんな雑踏の中、この場には明らかに不釣合いな少女が歩いていた。

 白いブラウスに白のロングスカート、白のキャプリーヌ、そして腰まである長い黒髪と整った顔立ち。

 まさしく清純を絵に描いたような少女であるが、いささかその表情は優れなかった。

 少女は表通りの喧騒を後に埃っぽい路地へと入っていった。

 ここは表の賑やかさがウソのような静寂さを保っている。

 しばらく少女は歩いて一軒の雑居ビルの前で足を止める。

 少女は不安げな眼でしばらくそのビルを見上げていたが、意を決したのか1つ深呼吸すると

 足早にそのビルの中に入っていった。

 少女が目指していた階は4階、そこにはこのような表記の看板があった

 

 「Office 埜奈木」

 

 そして、エレベーターで四階に着いた少女は恐る恐る黒のドアを回した。

 「ガチャ」という音ともに扉が開いて中の光景が見えてくる。

 部屋の真中には接客用のソファーがあり、窓際には事務用の机、そこの上にはデスクトップのPCと

 そこから出ているコード類で埋め尽くされていた。そして部屋の隅には申し訳程度の観葉植物。

 全体的に飾りは少ないが白を基調とした落ち着きのあるデザインの部屋であった。

 そして、ソファーには自分と幾分変わらぬ少女が寝そべりながら雑誌を読んでいた。

 が、ドアを開けた少女に気がつくとばねの仕掛けでもついているかのように凄い勢いで立ち上がった。

 「ハイハイ、Office 埜奈木へようこそ!!浮気調査からねこ探しまで何でもやりますよ!!」

 立ち上がるやいなやそう切り出す少女。しかし一方の少女はうつむいたままだ

 「闇を狩る人を探しています」

 白い少女がそう呟くとさっきまで営業スマイルを浮かべていた少女の表情は一変する

 「事情があるようだな...........」

 いつの間にいたのだろう、奥に続く扉の前の柱に黒いジャケットをきた青年が立っていた

 

 

 

 

 

 

 

 「俺の名前は埜奈木宗一郎、それでこっちが黄美麗(ホワン・メイリィ)だ」

 青年―― 宗一郎はソファに腰をおろすとそう自己紹介をした。

 そうしている間に黄美麗と呼ばれた少女が紅茶が入ったティーカップをお盆に載せて持ってきた。

 そしてお茶を配り終わると、宗一郎のとなりに腰をおろす

 「私、倉橋真夜といいます。」

 少女はペコリと頭を下げる

 「で、倉橋さんは何に悩んでここ来たんですか?合言葉を使ったって事は普通の悩みではないのでしょ?」

 「はい、実は................」

 真夜と名乗った少女は事の起こりを静に語りだした..................................

 

 

 たしか、あれは二週間くらい前だったと思います。

 あの夜は熱帯夜だったという事もあってなかなか寝つく事が出来なかったんでした。

 それで、夜中の三時ごろだったでしょうか、私はベッドからおきてふと庭の方を見たんです。

 そうしたら、中庭から黒い影が飛び立っていったのです。

 まるで、大きな蝙蝠のような...................

 次の日..........庭で使用人の1人が死んでいるのが見つかりました。

 警察では強盗の仕業と言う方向で捜査をしているようですが

 あんな事は絶対に人間なんかには出来ません..........

 私......運ばれている死体を見てしまったんです........

 その死体はミイラのように干からびていて、そして......首筋に歯のような跡が残っていました.........

 その出来事があってからというもの、毎晩私の枕もとに誰かが立っていて私にささやくんです

 「もうすぐだよ.........って」

 

 

 

 真夜が事情を話している間、宗一郎は腕を組んで眼を瞑ったままだった...........

 「こんな、話をして信じていただけるかどうかは分かりませんが......本当なんです!!

 もう、これ以上つづいたら、私どうしたらいいか...............」

 真夜は顔を両手で押さえついには泣き出してしまった

 「吸血鬼、か............」

 そんな、真夜を目の前に宗一郎は腕組みをしながら呟いた

 「吸血鬼..........ですか?」

 「あなたの話をきいている限りではそういう事になる。もっともそれだけの情報でそうだと断定するのは難しいがね。」

 真夜にはにわかに信じがたい話ではあった。確かに使用人が異常な死に方をしたし、夜中に徘徊する影を目撃もした。

 しかし、この科学技術が発達した現代に吸血鬼なんて物が存在するのだろうか?

 だが、宗一郎の表情を見た限りでは彼がその様な冗談を言っているようには見えなかった。

 「吸血鬼っていうと、あの........ドラキュラとかですか..........?」

 真夜が恐る恐る宗一郎に尋ねる。

 「黒いマントを羽織って夜な夜な美女の血を吸いにくるというイメージはブラム・ストーカーが作り上げたものさ。

 吸血鬼と一言でいってもそれこそ多種多様に渡っている。中国の凶死、ルーマニアのストリゴイイ、スラブのクドラク、

 それにグールなんかも吸血の仲間とされているし、日本にだって磯女や山姥などそれこそ多岐にわたっているのさ。」

 延々と吸血鬼談義を展開する宗一郎だったが、それに痺れを切らした美麗が会話に割って入った。

 「宗ちゃんさあ、すぐに夢中になってウンチクを始めるのは悪い癖だよ〜。要は真夜さんが何者かに狙われているって事でしょ?

 だったら、ここはこのメイちゃんの出番でしょ?」

 「そうだな、今回はメイも役に立てるかもしれないな。」

 その言葉を聞いた途端、頬を膨らませて怒る美麗。

 「「今回は」って、何よ〜!?アタシは毎回役に立っているでしょ!!」

 「足を引っ張られている回数の方が多いような気がするな.......」

 「ムッ!!そんな事を言っているのはこの口かーーーー!?」

 美麗が宗一郎の口をつねり上げる。そんなやり取りを見ていて真夜は自然と笑みがこぼれた。

 彼女にとって自然と笑えたの実に久しぶりの事だった。

 

 

 

 

 

 

 「今回は久々に大事になりそうだな...............」

 宗一郎が唐突に切り出したのは真夜が「Office 埜奈木」を後にしてすぐの事だった。

 「宗ちゃんもやっぱり感じたの?」

 「ああ」

 「あの子からは確かにとても強い霊気が感じられた。でも、あの子自身の物じゃない。恐らくは........」

 そこまで美麗が話したところで宗一郎が会話を制した。彼女が言おうとしていることが分かるらしい。

 「彼女に付きまとっている奴のだろう。彼女が言っていた黒い影のものだと思う。しかし、残留思念だけで

 あそこまでの強い霊気を放っているって事は本体は一体どういう奴なんだか..........」

 「今回の件はなるべく早く調査を開始しなきゃ。出来れば明日からでも...............

 なんかアタシ、嫌な予感がしてきてしょうがないんだ............」

 美麗は「夢見」という特赦な能力を持った一族の血を引いている。そのため彼女が言った「嫌な予感」という

 言葉はあながち一笑にふす事が出来ないという事は宗一郎も充分承知していた。

 「そうだな...........明日、彼女の家を訪ねるとするか...............」

 宗一郎は視線を窓の外に向けながらそう呟いた。

 窓の外には眠らない街のネオンが輝いていた。

 

 to be continued

 


 どうも、お久しぶりです。G−MAXです。

 初のオリジナル作品である「Dragon Eyes」 いかがでしたでしょうか?

 とりあえず、今回の作品は私の学校があるという事で比較的に地理に明るい池袋を舞台にしています。

 地方のかたには「池袋ってなんじゃい?」と思われますが、まあ、そこはご容赦ください(汗

 自分としてもなるべく本文中にいろいろと補足はしていきたいと思いますので。

 今回の作品はホラーアクション物です。割と難しいジャンルでは有りますが、筆者が好きなもので

 ついに描いてしまいました。しかし、このジャンルはしっかりとした資料に基づかないと

 あっという間にボロが出てきてしまうのですよね。

 今回はまだ出だしだったので、それ程資料に頼るような局面はなかったのですが、

 これから話が進むにつれてどんどんそういう部分が出てくると思うので、この作品は

 書くのはわりと楽しいけど、ボロが出やすいという、まあ、諸刃の剣ですね。

 それから、作品中に宗一郎君がホラー談義をかましていますが、あれは私の趣味です。

 これからも彼の口をかりてウンチクを述べていきたいと思います。

 とまあ、作者の趣味丸出しで始まった今作品ですが、ひとまず応援の程宜しくお願いします。


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